NPO法人 環境防災総合政策研究機構

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  2011年 霧島山新燃岳噴火で想定される火山現象とその被害について簡単に紹介します。

【降灰による被害】

走行する車に巻き上げられる
火山灰

霧島新燃岳(宮崎県) 2011.1

押しつぶされたビニルハウス
三宅島雄山(東京都) 2000.9

車に巻き上げられる火山灰

霧島新燃岳噴火では多量の火山灰が降り積もった。車が走行すると乾いた火山灰は舞い上がる。火山灰は水を含むと、粘性が高く、かつ滑りやすくなるため、交通機関によっては運行停止や道路の閉鎖を余儀なくされる。また、火山灰は人や動物 (家畜を含む)の体に入ると呼吸器や眼の様々な疾患などへの様々な問題を引き起こすことが知られている。

三宅島2000年噴火では、降り積もった火山灰の重みによってビニルハウスの屋根が落ちたり、農作物がだめになるなどの被害が生じた。浅間山2004年噴火の際にも、降灰による農作物の被害が報告されており、経済的影響は大きい。また、山の斜面や谷沿いなどに降り積もった火山灰は、火山泥流(土砂流)の発生要因となりやすい。

【噴石による被害】

噴石により破壊された幼稚園
有珠山(北海道) 2000.3

噴石で屋根を破壊された小屋
三宅島雄山(東京都) 2001

有珠山2000年噴火では新たな火口の開口に伴って多数の噴石が放出された。噴石は火口から約600mの位置にあった幼稚園に降り注ぎ、屋根や壁を貫いて内部を破壊した。幼稚園手前の庭や周辺の畑には無数のクレーター痕(噴石の衝突でできた穴)ができた。

三宅島2000年噴火で火口近くにあった木造の小屋は、屋根の半分ほどを噴石で破壊されており、建物の中には多数の大きな噴石が床を貫いている。噴石は比較的火口に近い場所にしか被害を与えないが、その破壊力と飛散範囲は時に予測を上回ることがある。

【空振による被害】

空振で割れたガラス

霧島新燃岳(宮崎県) 2011.2

空振で割れたガラス

霧島新燃岳は2011年の度重なる爆発的な噴火で発生する空振により、「窓ガラスが割れる」、「戸口が外れる」等の被害が相次いでいる。 空振とは、爆発時に発生する空気の強い振動で,衝撃波として超音速で大気中を伝わるが、火口から離れると減衰して音波となる。空振による被害に備えるには、ガラスが割れて飛び散らないようフィルムなどを貼っておいたりするのも有効である。

【火砕流や熱風(火砕サージ)による被害】

火砕サージに襲われた小学校
雲仙岳(長崎県) 1991.9

低温火砕サージが通った跡
三宅島雄山(東京都) 2000.8
火砕流発生から5カ月後

雲仙普賢岳の噴火では、溶岩ドームの成長に伴い崩落が繰り返されて火砕流が発生した。その中でも、比較的規模の大きな火砕流からは更に周囲に流動性に富む高温の火山灰と気体が混ざった熱風(火砕サージという)が流れ広がった。わずか数cmの厚さの火砕サージが堆積しただけで木造家屋や鉄筋コンクリート造りの小学校の内部が引火炎上した。

三宅島2000年噴火では、低温の火砕流が山麓の学校や民家を襲った。低温のサージであったため、人的被害はなかったが、写真のように一定方向から灰が吹きつけたように民家や車にへばりついている。建築物や交通網、電線などのライフラインをはじめ、農作物や家の中のものも一瞬のうちに灰や泥に覆われてしまった。

【火山泥流(土石流)による被害】

火山泥流によって埋没した民家
雲仙普賢岳(長崎県) 1993.7

泥流によって押し流された橋
有珠山(北海道) 2000.4

雲仙普賢岳1991-95年噴火に伴って水無川流域では1991-93年に泥流による災害が発生した。堆積した火山噴出物が降雨によってもともとの河川を一気に流れ下り民家を埋めた(写真)。一方、20世紀最大の日本の火山災害(死者・行方不明者144名)である十勝岳1926年5月の大正泥流は、高温の火山噴出物が融雪を招いて発生した。

有珠山2000年噴火では、火口から熱泥流が発生し、1977-78年噴火後の泥流対策として造られていた流路工(西山川)を流下した。泥流の一部は溢れ出し、国道にかかっていた木の実橋を押し流し(写真)、周辺のアパートや公営温泉、小学校などを埋めた。火山灰や樹木、土石などを巻き込み流下する火山泥流は一般的な水の流れに比べて非常に大きなエネルギーを持ち、時に人家や橋などを流し去る力を持つことがある。被災地一帯は、現在、噴火遺構かつ砂防施設として利用され、小学校跡地にはビジターセンターができた。